スタッフインタビュー
福元 達也(建築設計、EC業務アルバイト)※退職済

行雲スタッフのご紹介ページ、ここではアルバイトのやじを紹介します。

2022年に行雲の面接を受けていただき、仲間になってくれたやじさん!

本業の建築事務所でのお仕事と並行しながら、行雲ではECの発送業務などを担当してくださっています。

また建築士として、『岡山くだものミュージアム』や『然味-sami-』の設計も行ってくださいました!

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久保

聞き手は、行雲のライティング業務を担当している、久保がさせてもらいます。

私は岐阜で完全リモートワーク中のため、オンラインでお話を聞きました!

株式会社行雲の建物設計兼アルバイト・福元達也

やじさんの主な仕事

  • 『岡山くだものミュージアム』『然味-sami-』の設計
  • おとどけ部での梱包・発送対応

やじというニックネームは「野人」からきています

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久保

やじさん、お疲れさまです!
忘年会でお会いしたことがあるくらいで、しっかりお話しするのは初めてですよね。
今日はよろしくお願いします。

やじ 宣材写真
やじ

そうですよね。
こちらこそよろしくお願いします。

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久保

早速ですが、最初に軽く自己紹介してもらってもいいですか?

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やじ

はい。福元です。あだ名は「やじ」です。
小学4年生の頃からずっと「やじ」あるいは「やじん」って呼ばれていて、もう20年くらいそういうあだ名です。

1年半前くらいに建築事務所を作って独立しました。
前職を辞めて独立するまでの準備期間中に、食べていくためのアルバイトを探していて。
その時にインターネットで行雲がやっている『暮らしの宿 てまり』の求人を見つけて応募しました。

今は、週1〜2のペースで「おとどけ部」で働いています。

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久保

ありがとうございます!

へえ、「やじ」っていうニックネームは小学生の時につけられたものなんですね。
ちなみに由来ってなんですか?
下のお名前に「やじ」が入っているわけでもないですもんね?

福元 達也 プロフィール写真
やじ

そうですね、下の名前は「達也」なので全然関係なくて。

えっと…小学生の頃、テレビでオカルト系の番組をやってたんですよ。
宇宙人とか幽霊とか、野人とか、そういう映像が流れていて。
で、当時僕、少年野球をやってたんですけど、その番組を見た翌日に練習に行ったら、友達がふざけて僕のことを「野人(やじん)」って呼んで(笑)。
単純にその一言がきっかけで、先生からも「やじ」とか「やじん」って呼ばれるようになりました。

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久保

え、そういう流れだったんですね!先生まで一緒に呼んじゃって(笑)
「やじ」が「野人」からきていたとは、今知りました。

行雲には、独立の準備期間中に応募してくださったとのことですが、どうしてうちを選んでくださったんですか?

『岡山くだものミュージアム』の外観
やじさんが設計してくださった『岡山くだものミュージアム』。「果物王国」とも呼ばれる岡山の歴史と成り立ちを伝える博物館です

作家やデザイナーさんと繋がりたくて、行雲に応募しました

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やじ

当時、「独立までの期間も食べていかないと」と思ってアルバイトを探していたんです。

それで、コンビニの店員だとか新聞配達だとか引っ越しだとか…よくあるそういったアルバイトではなくて、職場環境の周りにいい建物だったり街並みがある場所がいいなと。

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久保

ああ、なるほど。

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やじ

あと、独立後は作家さんやデザイナーさんと繋がっていきたいなと思っていたので、そういった作品を見ながら働ける環境がいいなとも思っていて。
そしたらタウンワークオンラインに『暮らしの宿 てまり』の掃除スタッフが募集されていたんですよ。

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久保

お、となるとけっこう希望にぴったりな感じだったんですね。

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やじ

はい。ここだったら、出勤するときも退勤するときも必ず美観地区を通るので、いい建物や街並みを見ることができるし、宿には作家さんの器や民藝品も置いてあるって書いてあったので。

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久保

うんうん。倉敷ガラスや十河さんの器などがありますもんね。

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やじ

はい、それで応募をしたんです。

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久保

なるほど。すごいしっかりとした基準を持ってアルバイトを探しておられたんですね…!

すみません、ちょっと私がまだ分かりきっていないところがあって。
「独立後は作家さんやデザイナーさんと繋がっていきたい」というのはどういう思いからなんでしょう?

いろんな作家さんのデザインに触れて、それをやじさんの設計業務に生かしていきたいということですかね?

『岡山くだものミュージアム』の館内
『岡山くだものミュージアム』の館内

岡山の閉ざされている建築文化を変えていきたい

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やじ

えっとですね、僕、愛知県出身で。
大学卒業後に東京の事務所に入って、現場は全国各地を点々としていたんです。
お寺とか観光地的なところが多かったんで、それこそ岐阜もですけれど、いろんなところに行きました。

で、その東京での仕事を辞めて岡山にきたときに「建築文化が閉ざされている」と思ったんです。

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久保

え、私無知すぎて申し訳ないんですけれど、「建築文化が閉ざされている」って言うのはどういう感覚なんでしょう?

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やじ

そうですね、全然発展性がないというか、情報が閉ざされているっていう感覚です。

それは、独立前に働いていた設計事務所の所長も同じようなことを言っていて。
他にもいろんな方がそう感じているみたいで、「どうして岡山では建築文化が発展していないのかな」と思ったんです。

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久保

うんうん、どうしてでしょう…。気になります。

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やじ

まずは、岡山県内の大学に最近まで建築学部がなかったことが原因じゃないかなと。
だから建築を志したい人は県外に出て、就職もそのまま県外でしてしまう。

だから、岡山には新しい情報が入りにくいし、そもそも情報が巡っていない。

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久保

そっか、建築学部がなかったんだ。

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やじ

はい。あとは、岡山って地域的にハウスメーカーが強いんですよ。
それはものすごく感じていて。
個人的には、同じお金を出すんだったら、建築家とか設計事務所に出した方が絶対いいものができると思っているんですけれど、岡山では「家はハウスメーカーで建てるのが当たり前」みたいな空気があって、そういう考えがもう根付いている感じがします。

もっといろんな世界があるのに…その固定概念みたいなものを変えたいんですよね。

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久保

なるほど。確かに、その固定概念が変われば、家を建てるときの選択肢も増えてより楽しくなる気がします。

それで、デザイナーさんや作家さんとの繋がりっていうのは、その「閉ざされている建築文化」を変えるところに繋がってくるんですか?

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やじ

そうですね。
岡山に3〜4年いて、建築業界同士で繋がっていても意味がないなって感じたんですよ。

というのも、長年岡山でやってきた建築関係の人たちが凝り固まっちゃっているんですよね。
お偉いさんとか役所・行政とかも変わろうとしないし、僕にはどんどん悪い方向に行っているように見えて、どうしたらいいかなって考えていて。

それでさっきの話に戻るんですけれど、「建築以外の分野の人と繋がった方が変えられるんじゃないかな」と思ったんです。

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久保

そっか、新しい風を入れるんですね!

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やじ

はい。他の分野の作家さんとかデザイナーさんと繋がった方が、いろいろ巻き起こしていけるんじゃないかなっていう思いがあります。

あと、岡山って地元の人々はあんまり気付いてないんですけれど、いいところがいっぱいあるんですよね。
民藝などのものづくりが歴史的な感じで形骸化されてないというか、現代の暮らしに息づいている、というのがあって。
それを地元の人は当たり前のことで、良さだと思っていないというのがあるんですけれど、僕はそれをやっぱり生かしていきたいなと思っています。

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久保

ああ、なるほど…!
それもあって、ものづくりに携わる人と繋がろうとされているのか。
腑に落ちました。

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やじ

そうですね。
あとは、岡山って若い人も移住してきていろんなことをやられているじゃないですか。
会社の経営者も若い人が多いイメージがあって。

そういった人たちと、作家さんやデザイナーさんとも繋がって、みんなで盛り上げていけたらいいなと思います。

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久保

うわーーー、すごいです。
作家さんやデザイナーさんと繋がりたいと思ったのは、閉ざされた岡山の建築文化を変えたいという思いや、民藝などのものづくりを生かしたいという考えがあってのことだったんですね。
ここまで具体的なビジョンを持って、応募してくださっていたなんて、同世代ながらもう感服です…!

私、わんさんじゃないですけど、「うちで働いてください!」って思っちゃいました(笑)
ちなみに作家さんとはもう繋がっている感じなんですか?

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やじ

行雲に入ってからはまだですけれど、自分の本職では結構もういろんな方と繋がっています。
これから一緒に色々やっていこうとしていますね!

『岡山くだものミュージアム』の1階にあるミュージアムショップ
『岡山くだものミュージアム』の1階にはミュージムショップも。旬の果物や、テイクアウトドリンク、オリジナルグッズなどを販売しています

掃除の仕事に応募したはずが、建物の設計をすることに!

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久保

そしてわんさん(代表)との面接を経て、2022年の6月に入社してくださったんですよね。

で、あれ?いまって宿の掃除の仕事ってされていますか?

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やじ

いえ(笑)
面接の時に、「実は会社の裏に古民家が2軒あって…」みたいな話になって。
で、今の『岡山くだものミュージアム』と『然味-sami-』を設計することになりました。

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久保

ええええ!これはもう引き寄せた感じありますね。
すごいタイミングと縁ですね!

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やじ

そうですね。まだその時は建築事務所としては準備期間中だったので、独立と同時に行雲と契約するっていう形になったんですけれど。

本当にびっくりしましたね、独立のタイミングで急にそういったお仕事をいただけて。

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久保

いやあ、鳥肌です。
やじさんがこれまで準備をしっかりしてこられたからこそ、チャンスが来た時にすぐ掴めたんだと思うんですけれども。

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やじ

僕、いまだに覚えているんですけれど、面接の後にわんさんがいろんなスタッフさんに僕のことを紹介してくださって。

「実は裏の古民家をやじくんに設計してもらうことになりました」みたいな。

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久保

ふふふ、もうすごいスピード感ですね(笑)
この日、最高すぎる。

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やじ

その時に、確かたまちゃんに「嬉しいですよね?」って確認されたんです。
僕が喜んでいる感じがしなかったらしくて。

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久保

あれ、そうだったんですか?

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やじ

僕、本当に感情表現が苦手で(笑)
その時は、いろんな先人たちが作り上げてきた倉敷美観地区で建築に関われるっていうのが、本当に誇らしくて、すごく光栄なことだと思っていたんですけれど…。

「嬉しいですよね?」って確認されたことは、いまだに覚えています(苦笑)

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久保

ふふふ。笑
ちょっとお話しさせてもらったら、やじさんがどれだけ建築のことが大好きか、熱い思いが伝わってきますけどね。

ではせっかくだし、設計していただいた『岡山くだものミュージアム』と『然味-sami-』についても訊かせてください。

『岡山くだものミュージアム』の館内
POPな吊るし飾りは、『岡山くだものミュージアム』の映えスポット

『岡山くだものミュージアム』は、夜明けをイメージして設計しました

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久保

まずは、2023年の秋にオープンした『岡山くだものミュージアム』からお伺いしたいです。
こちらは、どういうコンセプトで設計されたんですか?

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やじ

『岡山くだものミュージアム』は、ちょうどまだコロナだった時にお話をもらいました。
実際に現地を見てみると、まあ奥まったところにあって。
その一方で、美観地区っていうこれまでの歴史とか背景とかが蓄積されているのを感じました。

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久保

そうですよね。
ミュージアムになる前は倉庫として使っていて、『美観堂』の裏にひっそりあったのを覚えています。

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やじ

はい。その場所で『岡山くだものミュージアム』をどう提案するべきか考えたときに、「夜明け」のような、新しいスタートの象徴になる場所にしたいと思ったんです。

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久保

素敵。夜明けですか。

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やじ

ちょうどその時、「いずれコロナは明けるだろう」「もうそろそろコロナは明けるだろう」と感じ始めていた時期でもあったので。
この『岡山くだものミュージアム』が、新しいコロナ明け……いわば「夜明け」のような再スタートを切るシンボルになればいいなと思ったんです。

また、行雲で働くスタッフさんたちの活気溢れる感じを受けて、明るい「陽」のイメージを持つ場所にしようと思って設計しました。
ちなみに後でお話しする『然味-sami-』とは反対のイメージですね。

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久保

なるほど…。やじさん、私、今すごく沁みています。
場所の特徴はもちろん、その時々の空気や時代の流れも読みながら設計されるんですね。
「夜明け」って、コロナ禍だったからこそのコンセプトで、それがまたいいですね。

『岡山くだものミュージアム』の館内
岡山のくだもののことが小学生でもわかるように、分かりやすく展示しています
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久保

あ、だから建物の中が明るいピンク色なんですかね?
外は美観地区らしい落ち着いた感じなんですけれど、中に入ると元気が出る、明るいエネルギーを感じます。

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やじ

そうですね。外観は市の条例があるのであまり触れなかったんです。
「焼杉にしなさい」「漆喰にしなさい」とか色々と決まりがあるので。
建物の中だったら多少は良かったので、色を使おうと思って。

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久保

ちなみに、この色はなんていう名前なんですか?

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やじ

紅梅(こうばい)色です。
日本の伝統色なんですけれど、春先に咲く梅のような色で。
コロナからの夜明けということで、冬が明けた春の訪れをイメージして選びました。

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久保

紅梅色か…。柔らかくて素敵な色味ですね。

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やじ

後は、愛知県犬山市に国宝の茶室で「如庵(じょあん)」っていうのがあるんですけれど、これも日本建築の襖に紅梅色が使われていたりして。
そういう裏付けもちゃんとしてやっています。

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久保

すごい。日本建築と紅梅色って昔からあった組み合わせなんですね。
犬山市、岐阜から近いので今度実際に見に行ってきます。

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やじ

感覚だけでやるのがデザイナーなんですけれど、僕は建築家なので。
いろんな知識を持って提案しないといけないなと思っていて…日々勉強です!

『岡山くだものミュージアム』の2階にある休憩スペース
2階には休憩スペースもあります

『然味-sami-』は「陰翳礼讃」をコンセプトに設計しました

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久保

次に、『然味-sami』について教えてください。
元々は民家だった建物を、レストラン営業ができるように設計してくださったんですよね。

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やじ

『然味-sami』は、元々の建物を現地で見たときに、すごい暗かったんですよ。
場所も奥まったところにあって、どんよりとした感じだったんですね。

でも僕はそれを「悪い場所にある建物」とは捉えなくて。

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久保

…というと?

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やじ

僕の建築における考え方なんですけれど、暗いとか、敷地が歪とか、湿気がじめじめしているとか、崖地にあるとか…そういう人が「よくない」と決めている価値観って、建物にとっての特性であって悪いところではないと思っていて。

なので僕は「その場所や建物が持っている特性を呼び起こす」っていうのを、どんな建築においても貫いているんです。

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久保

なるほど。一見ネガティブに見えるところも、特性になるのか…。
これは人にも通じてきそうなお話かも。

『然味-sami』でいうと、もともとあった暗さを消し去るのではなくて、暗さを生かすように設計されたんですかね?

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やじ

はい。建物に入った時に感じた、暗くてどんよりとした感じを生かそうと思って。
それで、谷崎潤一郎さんという方が『陰翳礼讃(いんえいらいさん)※』という本を書かれたんですけれど、『然味-sami』はこの『陰翳礼讃』をコンセプトにしようと思いました。
※日本の伝統建築や美意識に見られる「陰」や「暗がり」の美しさを称えた作品

『然味-sami』は建物が長いんで、横から光が入ってきても、奥はどんどん影が深まっていくんです。
それが中途半端になっていたんで、光を強くして、影を強くしてっていう…コントラストが出るように設計しました。

倉敷美観地区のイノベーティブ・フュージョンレストラン『然味-sami-』
やじさんが設計してくださった『然味-sami-』。倉敷美観地区で初めてのイノベーティブ・フュージョンをジャンルとしたレストランです
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久保

すごい、一見するとネガティブに見えるところも魅力に変わって行くんですね。

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やじ

…ちなみにくぼちーさんって、『然味-sami』に行かれたことはあるんですか?

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久保

いや、まだ行けてなくて。
『岡山くだものミュージアム』には行けたんですけれど、『然味-sami』は写真でしか見たことがないです。

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やじ

そうなんですね。
実際に来られたときに見ていただければと思うんですけれど、『然味-sami』って坪庭が二箇所あるんですね。

ほとんどの飲食店って、坪庭とかそういうのを夜にライトアップするじゃないですか。
でも今回は、照明の明るさをすごく抑えたんです。

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久保

お、そうなんですね。
どんな感じなんだろう、気になるな。

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やじ

当時のシェフとか、働いているあんこちゃんとかクミさんとかからも、「夜、木がなんなのか見えないです」って言われるくらいの明るさで。

でもそれって、その時にも伝えたんですけれど、敢えてそうしてるんですね。

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久保

わあ、すごいですね。そこまで考えられているんだ…。

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やじ

だから『然味-sami』に関しては、感度を高めてほしいと思って。
視覚もそうだし、味覚とか香りとか嗅覚とか…。
感覚を研ぎ澄ませて、感度を高められるような空間になるよう設計しました。

倉敷美観地区のイノベーティブ・フュージョンレストラン『然味-sami-』
カウンター席からはお料理と一緒に調理風景もお楽しみいただけます

建築士は、天職だと思います

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久保

これらの設計って、やじさん一人の頭の中で考えられたんですか?

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やじ

そうですね。
僕、天職だと思っていて、直感的にすぐイメージできるんですよ。
その場所に入ったら、「こういう建物でこういう雰囲気にしよう」っていうのがわかって。
後からそれをコンセプトなどの言葉に落とし込んでいく感じですね。

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久保

すごい。それはもう、本当に天職ですね。

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やじ

逆のパターンもあって。
映画とかドラマとかCMとか旅番組とかで、自分が見たことのない場所が映っていたとしても、そこに少し行ったことがあったら、それがどこかって直感的にわかるんですよ。

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久保

え、どういうことですか?(笑)

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やじ

(笑)
えっと、とある大きな街並みがあって、例えば自分がその大きな街並みの一部分しか訪れたことがないとするじゃないですか。
その時に、画面に僕が行ったことがないその街並みの他の場所が写っても、直感ですぐ「あそこだ」ってわかるんですよ。

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久保

ほえええ、特殊能力すぎる。

福元 達也 プロフィール写真
やじ

行ったことない場所とかでも、写真で見たら「あの国だ」って分かったりもします。
空も違うし、植物も違うし、建物も違うし、空気の湿気の感じも違うから、なんとなく直感でパッとわかる特殊能力があって。

だからインプットするときも直感だし、アウトプットするときも直感だし、後から言葉を付け加えるっていう感じですね。

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久保

本当すごいですね…。
私さっきから、すごいしか言ってないような気がしてきましたけれど(笑)
私、わんさんとは全然違う人間ですけど、今のお話を聞いたら「設計してほしい!」って思いましたもん。

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やじ

…。まあでも、今の話はわんさんには言ってないですけどね(笑)
でもなんか、感じ取ってくれたのかもしれないです。

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久保

(笑)

『然味-sami-』の店内
『然味-sami-』の店内

わんさんは、自分たちに考えさせて任せてくれる人だと思います

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久保

ここからは、わんさんの印象について訊かせてください。
やじさんは、行雲の他のスタッフとは少し違った立場で一緒にお仕事をされたと思いますが、「一つの会社の社長として」と「一緒に店舗の設計の部分から立ち上げる中で」、それぞれどういう人だなと感じていますか?

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やじ

そうですね。会社の社長としては、人に任せる度量がある方だなと思います。
なんかほとんどの会社の社長って、人に任せるのが不安だから、社長が考えたり社長から指示を出したりすると思うんです。

でも、わんさんはまずスタッフにさせてみるっていう感じがしますよね。

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久保

うんうん、確かに。

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やじ

スタッフに任せてみて、その人がつまずいたり間違ったりしたら、一緒に軌道修正してくれる。
そういうところが、他の会社の方とは違うなという印象がありますね

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久保

ほんと、『美観堂』の商品仕入れとか、『有鄰庵』のメニュー開発とか、スタッフが主体となって動いている場面がいくつもありますもんね。
かといって、相談したいなっていうときは、いつでもウェルカムでいてくれますし…心強さも感じます。

一緒に店舗設計をされたときは、どうでしたか?

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やじ

でも、いま言った印象に近いです。
僕の提案をすぐに受け入れてくださったっていう感じでした。
もちろん、お店として必要な機能はわんさんから要望を出してくださるんですけれど、それ以外のコンセプトや考え方みたいなところは、提案をそのまま受け入れてくださった感じですね。

でも、受け入れてくださったのかわからないですけどね(笑)

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久保

ん?どういうことですか?

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やじ

本当は違うんじゃないかなと思いつつも、一回そういう意見もあるならやってみようと思ってくれたかもしれないですし、そこはちょっとわからないです。

…なんか難しいですね。
あんまり悩まないというか、いい意味では決断力がある感じがしたんですけれど、ネガティブなところでいうと、「説明してるんですけれど、本当に聞いてくれていました?本当にこれで良いのかな?」っていう感じはありましたね(笑)

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久保

それは、わんさんがすぐに「良いよ」って言ってくれるからですか?

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やじ

はい。なので、本当にちゃんと理解して「いいよ」って言ってくれているのかなという不安はありました。

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久保

なるほど。私的にわんさんってすごく素直な方だなと思うので、方向性が違ったらそれはそれでちゃんと言ってくれそうな気がするんですよね。

なので、やじさんの提案が本当によかったから「いいよ」って言ってくれたと思うんですが…。よければまたご本人に確認してみてください(笑)

株式会社行雲の代表取締役・犬養拓
弊社代表の犬養(わんさん)

行雲に入社して、「話を聞く力」がついたかなと思います

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久保

次に、やじさんご自身のことについて訊かせてください。
行雲に入社されて2年が経ちましたが、やじさんの中で変化はありましたか?

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やじ

えーっと….。(考えてくれるやじさん)
僕、出勤日も少ないし、いろんな部署で働いているわけでもないので、業務を通しての変化というのはあまりないんですけれど…自分自身としては聞く力がついたかなと思います。

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久保

お、スタッフとお話する中でですか?

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やじ

そうですね。
みんなよりも年上で建築事務所として社会人で独立してやっているんで、特に学生さんから相談をされることが多くて。

だからなんか、「こういうことがあって…」みたいな相談とか話があったときに僕がアドバイスするっていう流れで、人の話を聞く力ができたと思いますね。

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久保

なるほど。
行雲に入社される前は、聞く力は弱かったと思われていたんですか?

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やじ

うーん、なんて言ったらいいかな…。
僕、今もそうなんですけれど、20代の頃はより熱い思いを持っていて、どちらかというとスパルタでも大丈夫なタイプだったんです。
ずっとブラック企業で力をつけてきたし。

だから相談があった時も、これまではどちらかというと「もっと頑張ってこうしたらいいよ!」とか、スパルタな方向でアドバイスしてしまいそうな傾向があって。

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久保

ああ、なるほど。
アドバイスの傾向が変わってきたんですね。

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やじ

そうですね。
行雲に入って、いろんな人から話を聞いて、みんなの考えというか、「みなさん日々楽しく暮らしているんだな」っていう感じを受け入れるというか(笑)
なんかそういう感じになりましたね、ちょっと抽象的なんですけれど。

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久保

うんうん。ちなみに、スタッフからはどういう相談をされるんですか?
何かこれまでに印象的だったものってあります?

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やじ

うーん…『美観堂』のひなちゃんかな。
ちょうど就職の時期だったので進路の相談を受けることが多くて。

いっぱい考えて行動してチャンスを掴んで、今は自分がやりたいことができる会社に行こうとしているんですけれど、当初はすごく悩んでいて。
「とりあえずの企業に勤めて、そこで時間つくって考えてもいいかな」みたいな話をしてくれたことがあったんです。

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久保

そうだったんですね。

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やじ

それで、さっきの話でいうと、ちょっと前の僕だったら「いやそこはそうじゃなくて、自分がやりたいこと突き進みなよ!」みたいな感じだったんですけれど。
そこは「そうだよね」みたいな感じで….。

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久保

一旦、ひなちゃんの気持ちを受け止めつつ?

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やじ

そう。ひなちゃんの気持ちを受け止めて、アドバイスさせてもらいましたね。

なので、あんまり自分の意見を押し付けないようになったというか、人の話をよく聞くようになったかなと思います。

倉敷美観地区のイノベーティブ・フュージョンレストラン『然味-sami-』
『然味-sami-』の店内

行雲は、自ら考えて行動できるようになる会社です

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久保

さっき、出勤日が少ないっておっしゃられていましたけれど、今はどれくらいのペースで行雲で働かれているんですか?

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やじ

週1とか週2ですね。
金曜日か土曜日に出勤して、おとどけ部のEC業務をしています。

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久保

後は、ご自分の建築事務所のお仕事をされているっていう感じなんですね。

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やじ

そうですね。
なので勤務日も15:30までしか勤務していないです。

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久保

素朴な疑問で、事務所独立後も行雲でアルバイトをしてくださっているのはどうしてですか?
当初のお金の面もクリアされたかなとは思うのですが。

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やじ

気分転換でしかないですね(即答)

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久保

ふふ、楽しいんですね。ECのお仕事。

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やじ

楽しいです。
特に辞める理由がないです。

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久保

一緒に働いているスタッフや会社は、どういうふうに見えていますか?
おとどけ部だと、『美観堂』のスタッフと一緒に仕事することが多いですよね。

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やじ

『美観堂』のスタッフは、みんな大人だなあ、器が大きいなあと思いますね。
落ち着いて仕事を黙々とこなしているっていう感じがします。

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久保

大人だなあっていうのは、どういうところで感じるんですか?

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やじ

例えば、トラブルとかちょっとイレギュラーな事態が発生しても、「じゃあこうしよう」ってみんなですぐ段取りを組んで、スタッフに振り分けて、状況把握してトラブルを解消するっていう流れがあるんですよね。

焦らずに落ち着いて、イレギュラーな事態も解消していっているところに、大人だなあと感じますね。

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久保

うんうん。
たまちゃんやふじこさんを筆頭に、チーフメンバーもベテラン揃いですもんね…!

会社としてはどうですか?
行雲という会社はどういうふうに見えてます?

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やじ

行雲っていう会社は、アルバイトも社員も、いろんな人が自ら行動できるようになる会社のように思いますね。

さっきの話じゃないですけれど、イレギュラーな仕事とかマニュアル通りにいかない仕事があったとしても、若い学生さんたちも自分で解決方法を考えているし。
自分で考えた上で、提案とか相談をしている場面を見るので、そう思います。

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久保

確かに、何か相談する時も「私はこう思うんですけれど、どうですか?」って自分の考えをきちんと持った上で、言ってくれている感じがありますよね。
たまに自分の考えなしに相談すると、「◯◯はどう思った?」ってわんさんが深掘りして訊いてくれることもよくありますし。

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やじ

そうですね。
僕も具体的なエピソードが思いつくわけではないんですけれど、「これはこうしたらよくなるかな」「次はこうしてみよう」とか主体的に捉えて、話しながら進めている感じがするので。

もちろんその人次第なところはありますけど、行雲にいたら、自分で考えて行動できるようになっていくんじゃないかなと思います。

株式会社行雲のスタッフ集合写真
行雲のスタッフたち

死ぬまでに、教会を建てたいです

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久保

最後に、これから先、やじさんが人生の中でしたいことを教えてほしいです。

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やじ

そうですね、70歳くらいまでもうビジョンがあるんですけれど。
どっから話せばいいんだろう…(笑)

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久保

今のところ、そのビジョン通りにはなっているんですか?

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やじ

なってますね。
最初の方に言った、「デザイナーさんとか作家さんとかと繋がって岡山を変えていく取り組みをしたい」っていうのもやっていて、今はちょうどチームを作っている段階です。

あとは、「30代半ばで県外で活動するようになっている」というのがあって、ちょうど今県外で仕事をしているんですけれど。

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久保

すごい!

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やじ

あと、「教育にも力を入れたい」と思っていて、それこそ今年の4月から岡山理科大学の専門学校で講師をしています。
これも最初の方にお話しましたけれど、やっぱり岡山の建築教育を変えたいと思っていて。

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久保

そうか、岡山にも建築学部ができたんですね!

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やじ

そうですね。岡山理科大学に2007年にできて、岡山大学にも4年くらい前に建築家を育成するプログラムができました。
学生から変えていければ変わるかなと思って、今は教育の場にも立っています。

それで…最終的には70歳とかになった時には、教会を作りたくって。

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久保

教会、ですか!

福元 達也 プロフィール写真
やじ

教会っていうと宗教っぽいんですけれど、宗教もない、ただぼんやりと滞在できる場所です。
一番イメージと近いのが教会とか聖堂みたいな感じなんですけれど。
それを自費で作りたいなと思っています。

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久保

それはどういう思いからですか?

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やじ

日本人って、色々自分で悩んで、幸福度も低いとか言われるじゃないですか。
そういった方達が、そうじゃない人たちももちろんいいんですけれど、その場所に訪れてなんか響いて…感情が揺さぶられて変わっていくみたいな場所を作りたいなと思っていて。

僕、1000人が訪れて1人に響けば、社会って変わると思うんですよ。
そういった場所をおじいさんになった時に作れるようになりたいです。

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久保

うわあ、なんて素敵なビジョンなの…!

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やじ

それで、最終的には死んだ後も廃墟として、500年後、一万年後の人、宇宙人かもしれないですけれど、誰かがきて感じてもらえるものを作りたいなと思っています。

とある僕の好きな建築家の言葉で「美しい、素晴らしい建築は、廃墟になっても美しい」っていうのがあるんです。

実際そうじゃないですか。
紀元前に建てられたものも現代人を魅了して感情を揺さぶられる人もいるし、そういうものを作りたいなって思いますね、死ぬ前に。

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久保

壮大…!廃墟になっても美しいって、素敵ですね。
一万年後にどんな人がやじさんの教会を訪れるんだろう…。
やじさんも何回か転生してそうなので、ぜひ訪れてみてほしいです。

福元 達也 プロフィール写真
やじ

(笑)そうですね。

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久保

なんというか、今日はもう終始刺激がいっぱいでした…!
やじさんの建築への熱い思いに触れて、知らない世界を覗かせてもらって、すごく楽しかったです。

とりあえず、今度倉敷に行った時は、直接いろいろお話しさせてください!
ありがとうございました!

倉敷美観地区のイノベーティブ・フュージョンレストラン『然味-sami-』
『然味-sami-』の店内

ほぼ初めましての、やじさんのインタビュー。

いやあ、やじさんの建築に対する熱い思いをたっぷりと浴びさせてもらいました…!

インタビューを終えた後、ちょっとぼうっとしてしまったくらい。

同世代でここまで一つのことに熱中して、ビジョンをしっかりと掲げて動かれている姿に、かなり刺激をもらいました。
(インタビュー後、私も自分のビジョンを考え出したほど。笑)

聞けば、幼稚園の頃から建築に興味を持ってらっしゃったそうで…!

今度はどんな幼少期を過ごしていらっしゃったのか、やじさんのこれまでの人生についても聞かせてもらいたいです。

やじさんが設計してくださった『岡山くだものミュージアム』と『然味-sami-』は、面接場所になることが多い『有鄰庵』から徒歩20秒の距離にあります(久保調べ)。

来社された際は、ぜひこちらも覗いて見てくださいね

<やじさんちょこっとメモ>

おどどけ部が扱う商品の中で一番好きなのは『はれもけも』の『バターを使っていないバターサンド』。
お歳暮などで業者さんにお送りすると、とても喜んでもらえるそうです!

バターを使っていないバターサンド

やじさんは2025年3月に退職しました

このインタビューの後、やじさんは本業である建築士のお仕事に専念するため退職されました。

といっても、行雲との繋がりが切れたわけではなく、建物のメンテナンスや相談などで、引き続きお世話になっています。

やじさん、ひとまず行雲でのお仕事お疲れさまでした。

そしてこれからもどうぞ、よろしくお願いいたします!

その他のインタビュー